ブレーキキャリパーの剛性と取り付けについて

さて、先日アサカワスピードに年末のあいさつに行った際、浅川さんと久しぶりに色々お話しました。
菅生の耐久レースの話とか・・・
その際、そうそうと思った事がいくつかありました。
ASの07R1000はベータチタニウム製のボルトやアクスルシャフトが使用されてます。
お店に行けば分かると思いますが、まあスゴイバイクなんですよw。
レースではレギュレーション上チタンアクスルは使用出来なかったのですが、純正との違いは相当なものだそうです。
何が良いかと言うと、やはり強度があるのも当然なのですが、特筆すべきは振動減衰特性だと言う事です。
自分もそう思いました。
素材の持つ特性については、バイク業界よりもより人間の感覚に鋭い自転車業界が先進してます。
こちらの方の記事にもある通り、やはり振動減衰特性が優れているようですね。
ようはバネっぽいのですよ。サスペンション特性と言うべき性能があるんですね。
応力を強い力で掛けても平気な引張強度特性と、振動減衰特性の両立と言うのがバイクにとっては素晴らしい性能だと言う事です。
この辺がクロモリとの素材特性の違いなのでしょう。
自分もベータさんのボルトを締めたり緩めたりする度に、その締め付けトルクを受け止めるバネっぽさに感心してます。
しかも当然緩まない。締結能力が強いからですね。部品を「ぎゅぎゅっ」と締め付けてる感覚がリアルにレンチに伝わってきます。
これだけ締めるのが楽しいボルトも珍しいですw。
ネジ部とボルト頭部の特性を変えているベータさんのボルトならではの締め付け具合です。
これはキャリパー部にも当てはまります。
浅川さんと意見が一致したのは、「フルブレーキ前後のコントロール特性」です。
ようは、掛け始めや離す際のフィーリングのみならず、握りこんで油圧を掛けた際のバネっぽさを感じるのです。
自由自在に油圧をコントロール出来るのです。
当然、ブレンボのラジアルマスターも良いし、ニッシンのアルミピストンのフリクションやタッチの良さも絡んでます。
でも、ベータのボルトにした際の、まるで油圧が指先で自在に調整出来る感覚には至りません。
なので、コーナー途中でのブレーキ効力コントロールが抜群に良くなりました。
これにしてから、一度もコーナーで怖い思いをしてません。
バンクしててもブレーキが怖くないのですね。
引っ張り方向に高い応力が掛かるボルトが、キャリパーブリッジボルトなのですが、この部分の引っ張り強度の高さ、減衰特性?が抜群なのです。
ブレンボのレーシングキャリパーが何故チタンボルトを採用してるのか、良く分かりました。
キャリパーの素材もそうですが、ボルトの素材でも効き方やフィーリングが明らかに変わります。
2分割キャリパーは当然油圧が掛かると、開く方向に歪むのですが、この場合キャリパーの開き具合が絶妙になる感じなんです。
当然開き難くなるのですが、たとえ開いても戻り具合が素晴らしい感じ。
この部分もサスペンションがあるような感じで、バネっぽく戻るんですね。
面白いです。
もしかしたらただ固いだけのモノブロックキャリパーよりも、タッチは良いかも知れません。
何せ、キャリパー本体にサスがついてるんですからw。
ブレーキって効けば良いってものでは無くて、フィーリングなのですよね。タッチです。
ASのお客さんでも鋳造ブレンボにベータチタニウムを入れた人も同じ意見でした。
次にキャリパー取り付けボルトは、先の記事でも書いた横方向の応力が掛かります。
この部分は振動減衰特性に影響していると思います。
まとめると・・・
・ブリッジボルト・・引っ張り方向への強度に優れる。油圧を掛けて行った際のバネっぽさに優れる。
振動減衰特性は主にブレーキを掛けて、油圧が極端に掛かった際のフィーリングに優れる。
・キャリパー固定ボルト・・横方向への剛性に優れる。キャリパーが斜めにならない。および振動減衰特性により、ブレーキのタッチの向上が認められる。
この辺はアクスルシャフトの効果と同じですね。
お分かりでしょうか?
チタンは軽くするボルトでもなく、ただ単に引っ張り強度に優れているだけでもありません。
自分が一番凄いと思うのは、この振動減衰特性なのです。
ここにコストパフォーマンスが認められると思うのです。
ステムやフォークのピンチボルトへの使用も、剛性感の向上と同時にハンドリングやブレーキングの向上も認められました。
これも、実は微細にフォークへの入力を減衰してくれているのです。
これが凄いんですよ。
まるで、ただのボルトがサスペンション機能を持ったような感じなのです。
今年1年も6,000km位走りまわりましたが、一度もタイヤが滑りませんでした。
この辺の感覚も、路面のトラクションを正確に伝えてくれたからだと思います。
飛ばしても怖くないんですよ。
ブレーキ掛けても怖くない。
コーナーの途中でブレーキの効力を増しても怖くない。
なぜなら、路面のアンジュレーションを正確に伝えてくれるから。
しかも振動を減衰してくれる・・・
成程、そういった事があるから体感性能が抜群なんだ~
まあ、街乗りやだらっとしたツーリングペースでは意味の無いパーツですし、正直万人向けのパーツではありません。
あくまでも、キチンとサスを沈める事が出来、フルブレーキングが出来、タイヤに荷重を掛けられる人向けだと思います。
そうでないと、意味が無い部品ですね。
お、でもパナソニックの自転車でこんなのも出てるんですね。
55万円は高いですがw。
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コメント
ちょっとググッてみたのですが、振動減衰能が高いとされている金属材料としては、鋳鉄、亜鉛、マグネシウム、チタンなどがあるようですが、同じジュラルミン系でも2017は劣る反面、7075(YH75)は優れるとか・・・
これらは振動や共振が精度に悪影響を及ぼす工作機械やIT機器に使用される・・・
音響機器に求められる特性・・・
一般的に高弾性材は振動減衰能には劣るとか・・・
振動減衰能と剛性(感)やバネ感などの関連性が理解できないのです・・・
とはいうものの、非常に興味がありますので知りたいのです。
アサカワさんに聞きに行けばわかりやすく教えてくれるのでしょうか・・・?
2008-12-27 18:23 まめしば URL 編集
恐らくですね、引っ張り強度(剛性感)と振動減衰能、後自分が言うバネ感・・は違う分野の3つの特性なんだと思います。
クロモリの引っ張り強度と64チタンの引張強度は同じレベルですが、振動減衰能が違う為に上記のような特性が出るのだと思います。
自転車で説明するのが理解しやすいかと思い、自転車の世界のデータをリンクしておきました。
クロモリのパイプを上手く組み合わせれば、剛性感があり且つしなるフレームが作れますし、チタンフレームも同様の効果が期待出来ます。
ある意味、乗り心地と言うのはとてもファジーなものですが、ちゃんと理由があるんだと思うんですね。
剛性感は元々素材の持つ引っ張り強度の強さ。
バネ感はネジの作り方(頭部は固くて、ネジ部は伸びる。α‐β相であるネジ部と熱間鍛造してβ相に近い性質を持たせているネジ頭部)に依るものだと自分は思います。
スプリングバックと表現されてますが、まさにスプリングの戻しのような感触を締める際に感じます。
実は、自分が感じてるバネ感とは、このネジ頭部とネジ部の組成の違いによるものなのでは?と考えてます。
ネジ頭部で座面をガッチリ固定しつつも、ネジ部が伸縮(当然かなりの高強度の範囲内で)する為にサスペンションの様な動きを感じるのではないだろうか?と考えてます。
ひとつのボルトの中で、違う機能が金属内部で働いている・・と解釈しております。
そして、振動減衰能は素材の持つ固有の要素・・・に分解出来るかと。
まめしばさんなら、一度ベータさんのボルトをレンチで締められただけでも、その性能がご理解頂けると思います。
自分も、最初「なんだこれ?」と不思議に思った位ですw。
この辺の理解はあくまでも、自分なりの解釈です。
裏付けが取れてる訳でもありません。
ベータさんとかでも色々調べらているのだと思いますが、まだ途上なのでは?と思います。
なので、明確な効果検証がされている自転車界のデータを使用しました。
客観データとしては、バイク業界では余り拝見した事が無いので・・・
乗り心地が良くなるのは間違い無いと思います。
それをどのように明確化して行くかはこれからの課題でしょうね。
自転車のフレームがキーワードかと。
人間が乗るものですから、人間が効果があると感じる事が一番重要で、それを客観的に理論づける事が検証作業だと思います。
表現が素人なもので、拙い部分がありましたらご容赦願います。
自分もなるべく客観的な分析をしたいと思ってます。
独りよがりになるのは一番つまらない事だと思いますので。
機会があれば、試してみて頂きたいと思います。
百聞は一見に如かずだと思います。
本当に自分も最初は半信半疑だったんですよw。
アクスルシャフトなら振動減衰能の高さを更に感じる事が出来ると思うのですが、残念ながら自分のGSFには未装着ですので、実感をお伝え出来ないのが残念です。
試乗車でもあればベストなんですけどね。
純正シャフトと交換すると皆さん違いに驚かれるようです。
もう少し暖かくなりましたら、是非箱根辺りでもご一緒したいですね。
相当深いお話が出来そうで、大変楽しみです。
最近、なかなかこの手のお話が出来ないでおりましたので、大変嬉しく感じておりますw。
2008-12-27 21:08 つるりん URL 編集